今年度『寺子屋かしはら』第3弾は8月29日(金)10時より、講堂にて開催しました。今回は、『聴覚』についての講座でした。話の柱は3つで「音が聞こえるしくみ・難聴のしくみ」「難聴と認知症の関係性」「補聴器について」でした。講師は、九州リオン(株)・栗並宗一郎さん。多くの参加者で、「目からウロコ」のお話に聞き入っていらっしゃいました。
聴力の低下は40代から始まっているそうで、難聴者の割合は、60代で35%・70代で40%・80代で80%といわれています。まさに身近な問題といえます。耳は、外耳道・鼓膜(外耳・中耳)までの伝音系の部分とそこから先の内耳・聴神経・脳の感音系に分かれており、後者の感音系は加齢とともに衰え、聞こえにくくなるそうで、治療では治せません。そこで「補聴器」の登場となります。
「加齢性難聴」になるとどう聞こえる?・・・ 年齢とともに高い音が聞こえづらくなり、子音の区別が困難になり、音はわかるが何と言っているのかわからない。例えば、「さとうさんが・・1時に集合・・魚を買った・・」が「かとうさん? 7時? たかなを買った?」と、母音は同じだが子音を間違えるとか。 小さな声・音が聞き取れない、言葉がはっきりしない、早口が苦手になる、雑音の中で聞き取りにくい、などの症状が。
そうなると、家族や友人とのコミュニケーションがうまくいかなくなり、危険を察知する能力が低下し、災害・事故・事件にあうリスクが高くなり、また、聞こえないことで自信を無くし、社会的に孤立し、うつ状態に陥る可能性もあります。認知症発症のリスクが高まる可能性があります。わが国の認知症患者数は、65歳以上約3600万人のうち、2020年・600万人(16.6%)で2025年・700万人(19.4%)といわれています。なかでも、厚労省の認知症対策(新オレンジプラン)によれば『難聴が認知症の危険因子の一つ』とされています。難聴により「コミュニケーションが難しくなる」➡「人と会いたくない」➡「会話の減少」➡「うつ・社会的孤立」➡「認知症のリスク増」へ。対策としては、「音の刺激を増やす」➡「脳の活性化」➡「聞こえの改善」➡「社会的交流が増える」➡「認知症の予防・進行を抑制」へ。
そこで『補聴器』の登場です。補聴器は医療機器で形は似ていますが、集音器は電化製品です。「補聴器」は「有効性・安全性が確保され、対面販売が基本。個々にあった温室に調整でき、聴力に合わせて調整可能で、耳にフィットさせることが可能」とのことで、非課税です。これに対して、「集音器」は「有効性・安全性が確保されていないし、新聞広告や通販が主体。必要ない音がうるさく聞こえる場合があり、調整の幅が狭く、ほとんどが軽度難聴用で耳にフィットしないこともあり、ハウリングの可能性あり」とのことで、集音器を使ったものの効果が得られず、そのことで「補聴器はだめだ」「補聴器は役に立たない」と判断しないで!とは講師の栗並さんのことば。「聞こえ」もリハビリが大切という流れになっています。脳が音を聞くのですから、難聴の脳に補聴器を付けて、「うるさい・雑音・不快」に慣れて、音に慣れる「脳」にするため、トレーニングが必要です。常時つけないと、脳が変化しません。はじめは数時間➡半日➡1日でもOK。3カ月を目安に継続し、途中でやめると脳が変化しません。因みに、補聴器は「聞こえの良い」方の耳につけるものだそうです。
【参加者のアンケートより・・・一部抜粋】
●難聴が認知症のリスクが高いと知り、補聴器の大切さが分かり良かった。分かりやすい話で良かったです。
●難聴には補聴器なんですね。補聴器以外の方法を教えて欲しかった。音の聴き方とか、トレーニングがあるのかな?知りたかった。
●補聴器の基本的な事がわかった。現在リオンの補聴器を使っているが、購入後のフォローをきちんとやってもらっており、ありがたい。但し、定期的な調整が必要であり、担当の方が私に合った調整をしてもらっているので、ありがたい。補聴器は非常に高額であり、保障期間が3年と短いのが困る。3年から5~7年にしてほしい。
●数年前から、左耳が聞こえにくくなりました。ご近所から補聴器の事を聞きますが、各個人によって補聴器の話の内容が違っています。トレーニングが必要なのが分かりました。
●せっかく補聴器を買ったのに、なかなかつけたがらない母に、今日の講座の内容を伝えたいと思います。私には、まだ関係ないと思っていましたが、私も将来お世話になる時には、柔軟な気持ちで付けたいと思える講座でした。「補聴器に何かやってもらうのではなく、自分が使いこなす。自分が主人公である。」「雑音の中から、自分の必要な音だけを選択する。そのためには、最初は雑音を聞くことも大切」この言葉が印象的でした。ありがとうございました。
●現在、補聴器を片耳に使用しています。詳しい話が聞けて良かったです。使用しているので、理解しやすかったです。買い替えの時期も近づいています。メンテナンスは年2回行っています。今の所使用できています。人の声が聞こえているので、社会の中での生活も楽しめています。補聴器を付け始めたのは、自転車通勤中、後ろから来た電気自動車が近づいたのが分からず、驚きました。自分の安全の為に購入、雨音も聞こえてなかったけど、聞き取れるようになりました。耳垢が柔らかいので、夏場は外れやすいので、耳掛け式を利用中。落とすことがほぼないのですが、夏場の外仕事中は外れることがある。
●私は80代ですが、おかげで耳に不自由はありません。今日の講義を聞いて耳を大切にいかなければと思っています。いつも内容のある講義を企画していただき、大変ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。